吉田進のパワーリフティングのこつ 第7回 - MEGA POWER -




第7回「スクワットこだわり講座3 スクワットの立ち姿勢について」

再び書き始めると、伝えたいことがたくさん出てきます。
かなり細かな話ですが、スクワットの立ち姿勢。つまり、スタートする前の姿勢とフィニッシュした姿勢についてのお話です。

1. 良い姿勢・悪い姿勢

パワーリフティングのルールでは、バーベルを担いだまま直立の姿勢で、審判のスクワット開始の合図を待つことになっています。このとき二つの姿勢があります。ひとつはお勧めの姿勢、もう一つは改善した方がいい姿勢です。
写真を見ながら説明したほうが良いと思います。
ちょっと分かりにくいかもしれませんが、下の写真をよく見てください。

良い姿勢悪い姿勢

左の女子選手の後ろ姿勢がお勧めの姿勢、右の男性の写真が改善した方がいい姿勢です。

2 何が違うか?

背中の前傾角度に注目してください。
ルールでは「スタートとフィニッシュの姿勢で、背中の前傾角度は15度以内であること」と決られています。
実際には正確にこの角度を測るのは無理なのですが、審判の経験と直感で、選手の立ち姿勢のうち、前傾し過ぎと判断されたものに関してはスタートの合図がかかりません。日本では余程のことがない限り、スタートがかからないということはありませんが、世界選手権では時々見られます(本当は日本と世界の審判の目は同じが良いのですが…。)
ということで、二つの姿勢の違いは背中の前傾角度です。

3. 前傾し過ぎることの弊害

では、合図がかからなくて、長時間この前傾姿勢をとっているとどうなるか?
背中が前傾していると、背筋の緊張が極度に高まり、非常に疲れます。
そして、スタートの合図が遅れることによる背筋の疲れは、スクワットの記録にも影響します。
また、高重量を持ったままの前傾姿勢では、単に歩くということでさえ、とても困難なものになります。
立ち姿勢の理想は、下から膝、腰、背中が垂直になっている状態です。この姿勢が一番楽なのです。
理論上は垂直に立っていれば、上からどんな重量に押されても、骨の強さまでは耐えられることになります(実際は人間の体は一本の棒ではないので、どんなに垂直に立とうとしても、骨格上は完全な一本の棒状にはなりませんが。)

4. なぜ前傾するのか?

頭のてっぺんに重たいものを乗せた場合には、体は容易に垂直の姿勢を取れます。体の垂直線上に重量物があるとき、重心は体軸の中に位置するために、体は一本の棒のようになり易いのです。
スクワットではバーベルを背中の後ろに担ぎます。特にパワースクワットでは、背中のやや下に担ぎます。すると、バーベルという相当重たいものを体軸より後ろの方に担ぐことになります。
この後ろにある重さを体軸の垂直線上に持ってきて初めて、全体の重量バランスが取れますから、どうしたって前傾するのは当たり前。でも、背中はなるべく立てておきたい。
ここでちょっとしたコツが必要となってくるのです。

6. どうやって前傾を改善するのか?

すでに述べたように、腰を中心として背中が前傾していると背筋の付け根付近に大きな負担がかかってしまいます。スクワットのスタート前に、所定のスタンスを決めるまでは自力で歩きますが、このときフラフラしながらようやく歩いている選手を時々見かけます。体幹が弱いということもありますが、背中の前傾が原因であることもあります。

では、どうやって前掲を改善するのか?
結論から言うと、背中の上部だけを丸める。別の言い方をすると胸を張らない。ベンチプレスの逆のイメージです。さきほどの男性の写真をよく見てみると、彼が胸をかなり張っているのが分かります。そして、そのぶん体は前傾してしまっています。
腰から背中に関しては極力垂直、でも背中の上部だけは丸める。背中の上部だけ丸めるとバーを乗せるところは体軸に近付きます。また、背中上部だけを程良く丸めると、バーベルを乗せるあたりの角度が前傾していますから、バーベルが滑り落ちにくくなります。
顔やあごを前方に突き出すと、この姿勢が取りやすくなります。
息を吸うのも、胸ではなく腹に吸い込む感じです。

まずは、バーベルを担がずに、鏡を見ながら練習してください。
次にシャフトだけを担いで、この姿勢に近づくようにトライしてください。
そして、徐々に重たいものを担ぐようにしてください。

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