第10回「デッドリフトこだわり講座1 基本の確認」
デッドリフトの基本を以前書きました。
基本的にはナローデッドをお勧めしました。
その後、トレーニングを積んで現在は皆さんのデッドリフトはワイドスタンスであったり、ミドルスタンスであったり、ナロースタンスのままであったりしていると思います。
今後デッドリフトに磨きをかけていくために、ここで一度ナロースタンスを見直してから、先に進むことにしましょう。
1. 基本はナローデッド
デッドリフトの基本中の基本はナロースタンスです。
背中を反らず、丸めず、ある程度膝を曲げた中ぐらいの姿勢から、足で地球を押すようにしてバーを浮かし、その後背筋を使って、胸を張る姿勢までもっていくナロースタンス。
この動きの中にデッドリフトの正しい動きがすべて含まれています。
ただしこのナロースタンスが、あなたの最高重量挑戦用に一番いいとは限りません。ほとんどの場合、足を開いたほうがもっと重量が上がると思います。
では、なぜナロースタンスをお勧めするか。
今一度、基本を体で確認してもらいたいからです。
まだデッドリフトをやったことがない初心者の場合、やはりナローから入っていきます。
言葉で色々説明するとわかりにくいので以前書いたことと重複しますが、復習のつもりで読んでください。
2. ナローデッドの動作の確認
1. 立ち位置
握りこぶし一つバーから離れて立ちます。バーとの間に約10センチの距離を取るのは、しゃがんでいって、スタート姿勢を取る時にバーがすねに密着するようにするためです。
2. スタート姿勢
膝を程よく曲げます。背中は自然体で前傾させます。イメージとしては45度ぐらい前傾させます。顔は正面を向きます。
3. 引き出し
背中で引っ張るイメージと言うよりは、お尻と足で地球を押す感じです。足の力でバーベルを浮かす感じでもあります。
4. 前傾
バーが膝のあたりまで来る間は背中の前傾は保ちます。
膝を過ぎたら、前傾した体を起こします。そのまま直立姿勢まで体を起こし続けます。
5. フィニッシュ
肩を後方に引き、胸を張ります。「気をつけ」の姿勢です。試合で肩が前方に残ったままのフィニッシュを見かけます。これではフィニッシュしたと言えません。最初に正しいフィニッシュの感覚を体に植え付けるのが大切です。
6. 顔の向き
基本はいつも正面です。ただしバリエーションもあります。引き出しは背骨の前傾に合わせてやや下向き。
引きながら徐々に顔を起こしていく方法。あるいは上を見ながら引く方法。どれも否定しませんが、背骨に対して極端な角度をつけないほうが自然だと思います。そういう意味では引き出しの時は顔はやや下向きはあり得ます。
3. ナローデッドの習得
軽い重量で何回もデッドリフトをやって、この動きを体に覚えこませます。初心者なら最低1カ月。出来れば3ヵ月ナローデッドで回数をやりこむことにより、デッドリフトの基本的な動きがマスターできます。そして、デッドリフトに必要な筋肉が養成されていきます。
ベテランはしりの筋肉と背筋の養成のために重たいデッドリフトの前に、軽いナローデッドでレプスをやりこむことが重要です。
その時、多くの人がすねにバーベルがぶつかって痛い思いをします。人によってはすねの皮がむけ、血が出ます。出来れば、ショートパンツやスパッツではなく、昔ながらの長いトレーニングパンツを着用してデッドリフトに挑んでください。血がシャフトに付いたら、消毒してください。
何度もデッドリフト繰り返しているうちに、人間は学んでいきます。バーは体の近くを通ったほうがいいですが、脛やひざにぶつかると痛い。痛いのは嫌だから、微調節する。こうやっていいフォームに変わっていきます。
4. 台湾デッドの誕生
台湾の軽量級の選手がデッドリフトですばらしい記録を出しています。
フォームは極端なワイドスタンスで、長い腕を生かして、スタート時の体の前傾がかなり少ないフォームです。しかもスタート姿勢で腰の位置が高い。強靭な脚でバーを浮かし、後半背中で引き切る見事なフォーム。これを私は台湾デッドと呼んでいます。重量級の選手には難しいフォームですが、中軽量級の選手には、目指してほしいデッドリフトです。一つの理想的デッドリフトです。
今から20年以上前、出来たばかりの台湾パワーリフティング協会から呼ばれて、3日間のパワーリフティング講習会をやったことがあります。
デッドリフトでは、基本的なナローデッドを指導した後、試合で大きな重量を上げやすいワイドスタンスの基本を教えました。それから2,3年して、そのワイドスタンスデッドが変貌していることに気が付きました。
我々より腕の長い人の多い台湾人は、ワイドデッドをやる時に我々よりは腰高でスタートできます。腕が長いとそれだけしゃがみが浅くても腕がバーに届くからです。
しかも股関節を思いっきり開いて、腰をバーに近づけますから、体の前傾も極端に少ないのです。股関節の柔らかさも大切なんです。
結果、腰高だからバーが浮きやすい。背中の前傾が少ないので背中の負担が少なく、フィニッシュしやすい。この二つの理由で彼らは日本の記録をあっという間に超えていったのです。